下式によって計算されます。
注：亜鉛皮膜の１０％が残っている時点までを耐用年数とする（ＪＩＳ Ｈ ８６４１）
鉄鋼素地にできる鉄さびは、組織が粗いため水分や空気をよく通し、時間と共にさびは進行しつづけ、温暖・多湿で都市や工業地帯が全国に分布している日本では、大気汚染が緩和された今日でも、鋼材を数年を経ずしてボロボロにすることがあります。 亜鉛はそれ自体としては比較的反応性の大きい金属ですが、大気中の環境下で亜鉛の表面に形成される亜鉛化合物は、緻密なさび層（保護被膜）となって腐食の進行を非常にゆるやかにし、これが亜鉛めっき長期防錆効果をもたせています。（図１） 表１は、日本における色々な大気環境下での亜鉛めっきの腐食速度と推定耐用年数です。
図１ 亜鉛保護作用
表１ 亜鉛めっきの大気環境別腐食速度と耐用年数（日本）
鋼材表面への塗装では、塗膜がきずつくと、その部分から鉄さびが進行して塗膜を浮き上がらせ、塗装が剥離するという傾向があります。亜鉛めっきでは、周囲の亜鉛が陽イオンとなって鉄の腐食を電気化学的に抑制する作用があり、めっき皮膜が浮き上がるということはありません。これを犠牲防食作用と呼び、亜鉛の防食作用のひとつの特徴になっています。（図２）犠牲防食のおよぶ範囲は、亜鉛めっき皮膜の境界から数㎜といわれています。こうした犠牲防食作用は、水中はもとより、大気中でもはたらきます。
図２ 亜鉛の犠牲防食作用
溶融亜鉛めっきは、水中でもすぐれた耐食性を示しますが、水質や水温によって大きな影響を受けます。水中での耐食性を決める大きな要因は、ｐＨと水温及び溶解塩の種類です。
①ｐＨ６～１２及び水温５０℃以下が、実用的な亜鉛めっき製品の使用条件です。
②水中のカルシウムやマグネシウムの存在は、それらが亜鉛と反応して保護皮膜を形成するという性質があり、一般に軟水中よりも、硬水中の方が長い寿命を期待できます。
③一般的な静水中での亜鉛めっきの腐食速度は、３０～１００ｇ／㎡／年です。
④流動中の腐食量は通水速度に比例し、５ｍ／分では静止水の２～３倍、１０ｍ／分になると更に２０％程度増加します。水中で溶融亜鉛めっき製品を長期にわたって使用される場合は、水質や水温が適当かなどの調査を行うことが重要です。
海水中でのめっき層の腐食速度は、最初の１年間には１００～１５０ｇ／㎡程度となりますが、腐食速度は、使用期間が長くなるほど小さくなります。海水中に含まれるマグネシウム塩、カルシウム塩等が保護作用をするからです。なお海面付近で、潮の干満や波にさらされる場所での腐食速度は、これよりも大きくなるので、注意が必要です。
土壌中の腐食要因は、主として通気性、含水量、溶存物質の種類と量、電気伝導度、ｐＨなどです。一般に通気性が悪く、水分が多く、塩分があり、酸性かアルカリ性で、酸素が多いときほど腐食がはやくなります。特別に腐食要因のない土壌中での、亜鉛めっきの耐用年数は、亜鉛付着量を６００ｇ／㎡とすると、２４～２５年を期待することができます。なお地中に迷走電流があったり、産業廃棄物を含む埋め立て地などでは、亜鉛めっきの寿命が非常 に短くなる場合があるので、注意が必要です。
最近はコンクリート用細骨材として海砂を使うことが多くなり、これに含まれる塩分によって鉄筋がさびやすくなっています。鉄筋が錆びると、鉄筋の体積膨張が起こり、そのためコンクリートにひび割れが発生して強度が低下し、コンクリートの破壊を招くことがあります。鉄筋の腐食対策として、溶融亜鉛めっき鉄筋を用いると、亜鉛のさびは体積膨張力が小さくコンクリートのワレを招くことはありません。また溶融亜鉛めっき鉄筋とコンクリートの付着力は、裸鉄筋に比べて大差は無く、異形鉄筋では特に良好な密着力を発揮します。亜鉛めっき鉄筋コンクリートの暴露試験によれば、亜鉛皮膜が異常腐食を起こす塩分濃度限界値を推定すると、概略的には表２、のようになります。
表２ 亜鉛めっき鉄筋と裸鉄筋の使用可能な塩分含有限界値
注：塩分含有％はコンクリートに対するNaCl換算重量％
亜鉛めっき鋼構造研究会「鋼構造物の溶融亜鉛めっき」No.18より
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