大阪亜鉛鍍金株式会社

製品設計のポイント

溶融亜鉛めっきを施す鉄鋼製品は、より安価で品質の良い製品とするために、いくつかの設計上のポイントがあります。基本は次の三つです。

①めっきが可能な形状と構造であること。(形状と構造に関する事項)

②鋼材材質がめっきに不都合でないこと。(材質に関する事項)

③めっきに不都合な成分を含まないこと。(成分に関する事項)

こうした設計用のポイントを外しますと、品質の良い製品を得られないだけでなく、不必要に高い費用を費やしたり、場合によってはめっきができないことがあります。
こうした設計上のポイントについて説明します。

形状と構造について

1 めっき鋼材の大きさ

当社の溶融亜鉛めっき釜の大きさは11.5m(長さ)×1.4m(巾)×2m(深さ)。有効深さは 1.7~1.8mです。 製品のひとつの大きさが、10m×1.3m×1.6mまでのもの、単体重量として最大2トンのものまでめっきできますが、これよりも大きい製品につきましても、「二度づけ」等の方法により、めっき可能な場合がありますので、当社までお問い合わせください。

2 密閉空間があるとめっきができません

1.閉じこめられた空間の浮力で製品が浮きあがり、前処理やめっきができません。

2.めっき浴の高温で内部が膨張し、製品を破壊することがあります。 中空体の製品では、空気抜きと亜鉛が出入りする穴を必ずあけてください。

3 管類の組み合わせ材

管類の溶接・組み合わせ材の製作のポイントは、空気抜き孔と亜鉛が流入・流出する孔を十分に確保することです。

4 スカラップをとってください

補強用リブや補強板を取り付けた製品では、スカラップが必要です。スカラップがなかったり小さいと、製品が舟形になってめっき浴につけ込めない場合や、余剰亜 鉛が製品に大量に残り、あるいは亜鉛の流れ跡で外観を損なうことがあります。

5 タンク構造の製品

タンクなどの構造では、出入り口の構造に注意が必要です。内部に大量の亜鉛がたまったり、浮力でめっき浴に沈まずにめっきができない場合があるからです。

6 めっきによる歪みを少なくする

製品の形状によって、あるいは大きな残留応力が残っている鋼材では、めっき工程での急熱・急冷で歪みが発生することがあります。 一般に溶接部には熱応力が残り、溶接方法によって歪みの発生度合いが異なります。

1.突き合わせ溶接では、両溶接を行うと歪みが少なくなります。

2.肉厚の厚いものと薄いものを溶接すると薄いものに歪が発生しやすくなります。

3.薄い板材を形鋼や平鋼で補強する場合、全長溶接よりもポイント溶接の方が歪みが少なくなります。

鋼材の形状や構造では次のような特徴があります。

1.肉厚の薄いもの、長さの長いものほど、歪みは大きくなる傾向があります。

2.H形鋼→C形鋼→L形鋼→平板の順で、歪みが多くなります。

3.管では経が大きいほど管長に対する歪みは小さくなりますが真円度が悪くなります。

4.構造物をトラス構造に補強すると、歪みは小さくなります。

5.冷間で曲げ加工した鋼材では、曲がりが戻る傾向があります。

6.コの字型の大型構造物で、開いた部分の寸法を維持したい場合は、開口部を補強材で仮止めすることが有効です

7 めっき後に可動部分とする構造

めっき後に回転させたり摺動する部分を持つ構造物では、固定部と可動部の間に少なくとも2㎜の隙間が必要です。隙間が少ないと、めっき後にその隙間部分に亜鉛が凝固して動かなくなったり、めっき皮膜が剥離することがあります。

8 「はめあい構造」のあるもの

はめあい構造のあるものでは、はめあい部に両側で最低1㎜以上の余裕が必要です。 1㎜を上回るはめあい精度を必要とする場合は、はめあいゲージが必要になります。 はめあい部分がある構造物では、はめあい精度を得るためにめっき作業や仕上げ作業での特別の注意や処理が必要ですので、ご注文の際にご指示ください。

9 ねじ部のめっき

鋼構造物に取り付けられたボルト・ナット類に溶融亜鉛めっきを行うと、ねじ溝に亜鉛が溜まり、ボルト締めができなくなることがあります。そのため次の対策が必要です。

1.ねじ部のめっき皮膜を残して、ブルと締めを可能にするためには、ねじ部に0.7㎜以上のオーバータップ(クリアランス)が必要です。

2.必要なクリアランスを取ることができない場合は、次のような方法があり ます。

①ねじ部をめっき前にマスキングし、不めっきとして、ねじ締め付け後に高濃度亜鉛未塗料を湿布する。
注:ナットに仮ボルトを埋め込む場合、ボルトの径が8㎜以下では、めっき後にボルトを外す際、折れることがあります。小径ボルトでは、ステンレスボルトが有効です。

②製品のめっき後に別途にめっきされたねじ部を取り付ける。

3.ねじ部のめっき皮膜が除去されても構わない場合でも、小径ボルトでは水素脆性によってボルトが折れやすくなることがあります。製品に取り付ける小径ボルトはステンレスボルトを採用するか、ねじ部のマスキングが有効です

10 重ね合わせ溶接の際の注意

間欠溶接では、隙間にしみこんだ前処理工程での薬液などが、めっき後に流れだして、めっき面を汚すことがあります。全周溶接を行うとこうした問題はありませんが、逆に局部的な欠損部があると、そこからしみこんだ水分などが、めっき浴の高温で膨張し、製品を変形させたり、破壊することがあります。全周溶接を行う場合は、圧力抜きのために、鋼材厚みの3倍以上の径の開口部を必ずあけてください。

11 部分的に不めっきにする

部分的に不めっきにするためには、次の二つの方法があります。

1.めっき前に、不めっきとしたい部分をマスキングする。

2.めっき後に、サンダーなどでめっき皮膜を除去する。

通常は施工容易なマスキングによる方法を採用します。 マスキング材料としてはマスキング塗料とマスキングテープがあります。広範囲にマスキングする場合は、塗料による方法が容易ですが、棒材やパイプなどでは、テープを用いることもできます。マスキング処理は、鋼材の入荷後に施すこともできますが、作業が煩雑で別途費用も必要であり、お客様の工場で塗布していただく方が問題も少なく効率的です。マスキング塗料については、当社に問い合わせください。

成分について

同一条件でめっきされても、めっきの被膜の厚さ、外観、密着性などで大きな差を生じることが あります。これは主に鋼材の材質や化学成分の含有量に影響される結果です。この中でシリコン(Si)・リン(P)・アルミニウム(Al)の三つの成分は、鉄と亜鉛の合金反応を活 発にするという性質があります。 この間連続鋳造での製鋼法が普及するなかで、一般鋼材成分としてSi含有量が多くなる傾向があり、また高張力鋼など合金鋼では強度を増すため鉄以外の成分を多く含んでいます。これらの各成分が、溶融亜鉛めっきに及ぼす影響について説明します。

シリコン(Si )

Si の含有量が0.02%以下では問題がありません。0.05~0.12%の範囲、及び0.24%以上では、亜鉛と鉄の合金反応が活発になり、「やけ」が発生したり異常に厚いめっき層になることがあります。

アルミニウム(Al)

間Siとの複合作用の関係で、SiとAiの合計が0.05%を越えると、「やけ」が発生しやすくなり、灰黒色のめっきとなることがあります。通常のめっき皮膜を得るためには、下記の基準が必要です。Si含有量<0.02%であって、Si%+Al%<0.05%

リン(P)

Pも亜鉛付着量に大きな影響を与えます。
Si含有量が0.025%程度で、P含有量が0.02~0.03%以上になると、合金層のδ1(デルタ ワン)層の部分的崩壊が現れ、z(ツェータ)層とh(イータ)層の混晶の生成に代わり、合金反応が活発化してきます。甚だしい場合は、剥離しやすいめっき層になることがあります。PはSiとの複合作用が大きく、正常なめっき層の形成を保証する基準は、次のように考えられています。
Si含有量<0.04%
Si%+2.5×P%<0.09%

材質

鋼材のさび、鋳物、溶接、曲げ加工、防錆塗装を施した鋼材、表面にきずなどがある鋼材が溶融亜鉛めっきに及ぼす影響について説明します。

1 厚いさびによる表面の肌荒れ

さびが厚く発生して表面が荒れたり、熱処理によって厚いスケールが形成された鋼材など、表面に出家凸凹がある鋼材ではめっき後も凸凹がそのまま残ります。

2 鋳物

鋳物表面に鋳砂が残っていると、その部分が不めっきになります。鋳砂は事前にショットブラストなどで除去してください。

3 鋼材の圧延きずや二枚板

鋼材によっては圧延時のきずが残っているものがあります。細く深いきずでは、めっき後にその部分が、強調されて線状に盛り上がる場合があります。二枚板になっている鋼材では、その部分がふくれたり浮き上がったりします。いずれも鋼材の表面状態が原因なので、鋼材の選定には注意してください。

4 溶接スラグとスパッタ防止剤

溶接スラグが付着した部分は、前処理においても除去されず、不めっきとなります。溶接スラグは完全に除去してください。スパッタ防止剤を塗布して溶接する場合は、水溶性のスパッタ防止剤が脱脂での除去が容易であり、無機質のスパッタ防止剤は前処理で除去できずに、塗布した部分が不めっきになることがあります。

5 脱脂困難な防錆塗料

水性や油脂の鋼用一時防錆材が塗布された鋼材は、脱脂工程で除去できます。しかしクロム系や鉛系の無機質防錆材など、アルカリ脱脂で容易に除去できない防錆塗装が施された鋼材では、剥離剤を用いても塗膜の除去が困難な場合があります。こうした塗装を行った鋼材をめっきされる場合は、事前にご連絡ください。

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